前より近なったはずやのに、シンジがどんどん遠なってく。そう思うてた。
いつものように長い真っ直ぐの髪は白い隊長羽織の上で、金色にキラキラ光っていた。
自分も同じような色なのに、全然違うように見えとった。
前はあんなに気軽に触ってたのに、今はそれが出来んくて、何度も手を伸ばしかけてやめた。
自分に無い物への憧れ。
短かった自分の髪を伸ばし始めたんも、長うなればキラキラして見えるんかな、と思うとったけど、やっぱりあんまり変わらへん。
そんなうちの気持ちなどお構いなしに、大きな掌で頭を押さえたり、からかうように撫でていく。
(悔しいなぁ。なんでそんなさらっと触れるん?ウチが変に意識しよるからアカンのやろか)
「なんやねん、さっきから人の後ろ頭にガンつけよって。言いたいことありよるなら、さっさと言ぃ」
「シンジの髪、さらっさらで・・・気色悪!」
「なんやと!」
アイツが振り向いた瞬間、毛先が優しく頬を撫でていった。
目の前がキラキラ光った。
だから一瞬逃げるんが遅なった。
「・・・ホンマ、なんやねんな。おまえが大人しゅう捕まるなんて、雨降るで」
「うるさいわ」
両頬をふにふにとつままれて、バツが悪そうな声しか出て来いひん。真っ直ぐ顔も見られん。
「なんや分からんけど、オレにはラッキーデーやな」
頬をつままれたまま、そっと唇が重なった。すぐ離れた顔はいつものようににやりと笑ったまま。
「変な顔」
そう言うて離れると、カラカラ笑って背を向ける。眼前に広がるんは、また金の糸。
「ほれ、甘味処に行くんやろ?もたもたしとると休憩時間終わるで」
「・・・おまえな、乙女の唇奪ったんやさかい、ちゃんとおごれよ」
「いーやーでーすー。ぼけっとしくさってるおまえが悪い・・・あイタぁ!」
後ろから金の髪を引っ張ってやった。
戸惑わず、触れた。
なんや、こんな簡単なことやのに、ウチはなんで触れんかったんやろ。
勝手に敷居高こうして、距離を置いてるんは、ウチだったんや。
歩く調子に合わせて波打つその金色を、早く追い越したれ!
<終>
付き合い始めで、相手隊長だし、自分より(ちょっと←意地)強いし、なんかぎくしゃくしちゃったひよ里の話。注釈つけないと訳の分からん話になる。ringoの関西弁は偽物です。関西の方、ご容赦下さい。