夕飯が終わって、皆で暖かいお茶をすすっていた時のことだった。
「もう少しでハロウィンですな。そろそろ、お菓子の用意をせねばなりませんな」
すっかり現世のイベントに詳しくなったテッサイが、カレンダーをみながら呟いた。
「おぉ!あのかぼちゃ祭りじゃな!今年もかぼちゃパイを期待しておるぞ、テッサイ!」
同じく長く現世にいるはずの夜一の認識は、何故かずれていた。
「違ぇーよ。皆でコスプレする日だよ!んで、お菓子もらいに近所を回るんだ」
「ジン太くん、惜しいけど違う・・・」
雨の言葉に、イラっときたジン太が雨に掴みかかろうとした時、のほほんと様子を見ていた喜助が雨の助けに入った。
「まぁまぁ、どうせやることは同じなんですから、落ち着いて。そんじゃあ、ジン太と雨は明日からハロウィン用にお菓子用意しといて下さい。テッサイは去年と同じくかぼちゃ担当で」
子供たちは顔を見合わせ不満顔だったが、毎年どっちかはお菓子担当になるのだ。
「あ、そうそう。今年のハロウィンは黒崎サンの妹さんも来る予定なので、二つ余分にお願いします」
さぼりそうなジン太への対策だ。一護の妹・遊子の名をちらつかせておけば、文句言いつつやるだろう。二人でやれば早いはずだ。
「喜助、儂は?」
きらきらと光る金色の瞳がこちらを見上げてくる。このヒト、性格上楽しいことに首を突っ込まずにいられない。
(もう、役割ないんだけどなぁ・・・。参ったな。)
喜助が逡巡していると、不機嫌な声で、儂には何もないのか?とすごんでくる。
「や、いや、あ!じゃあ夜一サン魔女係りで!」
「何じゃそれは?」
「えーと、当日魔女のカッコして子供にお菓子配る役っス!どうっすか?当日の影の主役っスよ!服はアタシが用意するし、当日までのんびりしてていいというお得な役っス!」
夜一は少し考えたが、よかろ、と言って再びお茶を啜った。
当日。
近所の子供がトリック オア トリートと可愛い声ではしゃいでいる。
そんな様子を見ながら、一護とルキアは浦原商店の座敷に上がって、テッサイの淹れてくれたお茶を飲む。
「なぁ、あれ、自業自得だよな。どーみても」
「・・・うむ。策士、策に溺れるか」
「や、何も考えてなかったんだと思うぜ」
二人の視線の先には子供の保護者(男親)の前にたちはだかり、夜一を見せようとしない大人気ない喜助の姿があった。
そんなことも露知らず、夜一は胸元の大きく開いた魔女の衣装のまま笑顔で子供にお菓子を配っていた。
<終>