・アナタノネツヲ・

薄暗い室内から聞こえる、湿り気を帯びた荒い息遣いと、漏れ出す声。手繰り寄せる体は、汗に濡れて裸を覆う。何度も唇を寄せては厚さの異なるそれを重ね、体を密に重ね、吐息を重ねる。

潤んだ瞳と、熱い瞳が絡まれば、途端に燃え上がる焔を静める術は無い。体が焼き尽くされるまで、体温は熱いまま。
秘密の情事は、上司と部下の垣根を越えて、只の男と女にさせる。誰も知らない。誰にも知らせない。二人だけの秘密。
普段、冷静で快活な女はすっかり蕩けて、甘い顔を見せて、男の為すがまま体を委ねる。
男は思慮深い優しい瞳を隠して、獰猛な只の雄になり、女を食らう。
先に虜になったのはどちらか。穿たれた楔を、溢れる蜜が喜んで迎え、咥える。
一つになる、この瞬間がたまらなく気持ち良い。男が、はっと短く喘ぐと女はもっと深く繋がりたくて足を絡めた。男はいつもそれを喜ぶ。今も笑ってキスをくれた。
緩く始まった律動に、妖しく撓る腰。
擦れる性器が濡れた音を容赦なく響かせる。それを恥じてる余裕なんて無い。キスをねだって、ねだりあって。だって、触れて居たいのだもの。愛しい人と一つになりたい。
男と女。繋がりあえるカラダ。それを繋げる心。
汗で滑る背中に腕を絡ませ、舌を這わせる。全身が性感帯のよう。
すぐに息が弾けて、動きが早まってきたなら、クライマックスはすぐそこ。絶頂の波が意識を飲み込む。
「はぁん・・・!・・・く・・・ぅっ!!」
 男はその瞬間の女の顔が大好きだった。壮絶に妖艶で、淫らだから。
 きゅんと収縮する膣内が陰茎に吸い付く。
“ボクが欲しいんでしょ・・・?あげるよ。いっぱい、あげる”
 小さく呻くと、白濁の奔流が迸った。それは脈打つように注がれ続ける。
 荒く上がる息もそのまま、男が女の上に落ちた。ぎゅうと大切そうに受け止めて抱き締める。男も抱き締め返した。
「あぁ、もぅ・・・、ずっと抱き締めてて・・・」
 女の溜息と共に漏れた可愛いわがままを、微笑と共に受け入れる。
「あ、・・・抜くっスよ?」
「んーん、ダメじゃ。まだ中に居れ・・・」
 普段、絶対見せない甘えをようやく見せてくれるのはこの時だけだから、男は頬が緩むのを抑えられない。
「また大きくなっちゃうよ?」
「良い」
「じゃあ、口接けて」
 そうしてまた、唇を重ねては、次第に熱を帯びてくる。甘い夜は続く。
<終>
 
過去編:隊長と三席時代の喜夜。糖度高め。