・霞みの中の秘密・

 

「のう、喜助。儂だって、風呂くらい一人で入れるぞ」
ほかほか湯気がたつ、ヒミツの地下訓練所。その秘密基地に温泉ができた。夜一が提案して、喜助が作ってくれた。
早速入った夜一に続いて、喜助も湯に入った。
ちゃぽんと、お湯が跳ねる音がする。
「いやぁ、だって心配なんスもん。溺れてたらどうしようって」
「だからといって、こんな広い風呂で儂を抱えておらずともよかろう?それに、さっきからおぬしワザと儂に触ってきてないか?」
夜一を後ろから抱えるようにして、湯船の縁に体を預けた喜助は鼻歌でも歌いだしそうなほど上機嫌だった。逆に夜一は、喜助の腕の中で動きを阻まれて、窮屈さと何とも言えない気恥ずかしさを感じていた。
にごり湯だから、裸は見えない。けれど触れ合っている部分は確かに素肌なのだ。
お湯ではない、ぬくもりが背中からそして臀部まで生々しく伝わる。
「そんなことないっスよ。ちゃんと腰に腕巻きつけたまま、動かしてないじゃないスか」
「うー…、そうかのう…。でもおぬしの足が儂の足に何度も触れておるようじゃぞ…?」
「そりゃあこれだけくっついてるンですから、ぶつかるのは仕方ないですよー。気にしない気にしない」
色事に疎いお嬢様は、喜助のいいように言い含められていた。夜一も変だなと思いつつ、これが普通ですよ、と言われるとそれを信じた。
 
喜助は夜一の耳元で甘ったるく囁いた。
「さぁ夜一サン、体洗ってあげますね。一回お湯の外に出ましょ」
夜一はビク、と背を強張らせるとそのままお湯に潜水する勢いで、肩までお湯に浸かった。
「じ、自分でするから、いい!喜助は先に上がれ」
「あれぇ、どうしちゃったンですか?そんな、遠慮なんてしなくてイイですよ。昔はよくこうして一緒にお風呂入ったり、洗い合ったりしてたじゃないですかー」
「それは…、そうじゃが…」
「何照れてるんスか!ホラホラ、のぼせちゃいますよ」
なかば強引に体を持ち上げられて湯船から引き上げられると、夜一は裸を隠すように蹲った。そんな夜一を横目に、喜助はルンルンと鼻歌混じりに石鹸を泡立てていた。
「知ってますか、夜一サン。手ぬぐいで洗うより、こうやって手で沢山泡立てて撫でていく方が肌に優しいんですって!」
石鹸の泡にまみれた喜助の大きな手が、ぬる、と夜一の背中をなぞった。
途端に、ゾクと体を震わせる。
口から漏れそうになった声を慌てて飲み込むと、きゅっと唇を噛んで耐えた。
その仕草を後ろから満足げに眺めながら、喜助は手を動かし続けた。
 
背中が終わると、肩へと手を滑らせ、二の腕、上腕へと伸びた。
ゆっくりと小さく円を描きながら、触れられる。喜助の手が脇腹から徐々に胸下まで上がってくると、さすがに夜一も耐え切れなくなった。
「もういい!あとは自分でやる!」
膝を抱えたまま、声を荒げると、喜助の手は動きを止めた。
「どうしたんですか、夜一サン。アナタはお姫様なんだから、自分で洗う必要なんてないですよ。こんなことボクがしてあげますから、夜一サンはじっとしててくれればイイんです」
そうして夜一が二の句を告ぐ前に、両手は彼女の豊かな乳房に触れた。
優しく洗う、なんて生ぬるい動きではない。石鹸のぬめりをいい事に、掌で柔らかい胸を蹂躙した。
夜一もそれが、洗うという行為ではないことに気付いたが、ここでそれを指摘してもあっさりかわされるだけだと分かっていたから反論できない。
これがあくまで“体を洗う”という事にしておけば、体に触られるだけで終わる、とこの時は本気で思っていた。
だから、深い吐息も鼻にかかった甘い声も出そうになるのを唇を噛んでこらえた。
 
背中にせっけんのぬめりと、喜助の密着した体を感じる。
耳元に聞こえる喜助の呼吸がどんどん荒くなっていくにつれて、夜一の余裕もシャボンのように消えていった。
熱い掌が、何度も胸を撫で回し、硬くなった乳頭を容赦なく摘んでは押し潰していく。
「ん…、く・・・!」
風呂場には二人の吐息が弾む。
しばらくその感触を楽しんだ喜助の手が、なめらかな太腿を撫で始めた。
夜一がその感触にギクと背を震わせると、しめたとばかりに耳元でごくりと生唾を飲み込む音が聞こえる。
「夜一サン…、足開いて。ここもキレイにしないと…」
膝を抱えて身を縮めていた夜一の膝裏から太腿を撫で降りると、示指で陰唇の袷をそっとなぞった。ビク、とあからさまな反応をしてしまった夜一は、噛んでいた唇をわななかせた。
拒否しても喜助は先ほどのように取り合わないだろう。だが、もうこれ以上はダメだ。
このままだと、声を押し殺せない。
 
「…あ、あのな、女のココは、その、石鹸で洗うと荒れてしまうのじゃ!だから、ココはせずともよい」
夜一が言葉を紡いでいる最中も、指が中に入りたそうに入り口を上下になぞっていた。
「ふうん。じゃあ、石鹸が付いてない物で洗えばいいってことっスよね?」
「あ…、いや、石鹸を落としたからと言って、指はだめじゃ。その、爪の間とかに菌が入っておる場合があるし、ちょっとやそっと洗ったからといって、落ちないらしいしな」
夜一は思いつく限りで、精一杯誤魔化した。
「指じゃなきゃいいンでしょ?」
え?と問い質す間もなく、喜助に膝を崩されるとそのままうつ伏せにされた。
そして腰を両手で高く持ち上げられると、何か太いものが無遠慮に陰唇を割って中に入ってきた。
「な、何を…、や、喜助…っ!」
「これなら石鹸、ついてないっスよ。ちゃんとボクが奥まで洗ってあげます、からっ…」
言葉も切れ切れに、腰を推し進めると、両腕を巻きつけて逃げるのを封じた。
腰を揺すられる度、堪えていた声が、口から逃げる。
「喜助、喜助!だめじゃ!…四楓院の娘が嫁ぎもせずに、こんな、こんなことしてはならぬのじゃ!」
「夜一サン、前から言ってるじゃないスか。は…、これは、合体ゴッコっスよぉ…!随分、前から、ボク達こうして遊んでるじゃ、ないスか」
「嘘じゃ!これが性交なのじゃろ?!おぬしが前に、儂の中で出した白い液体も、子種なのじゃろ?!」
緩く動かしていた腰を止めると、そのまま背中ごと抱き締めて、恍惚とした低い声で囁く。
「違いますよ、夜一サン。これは、合体ゴッコ。ボク達二人だけの秘密の遊戯っス。性交なんてモノじゃない。確かに、あの白い体液は子種ですけど、その後ちゃんと洗い流せば、子は出来ません」
「そ、そうなのか?」
「ええ、そうっス!だから安心していいんスよ。でも、前にも言ったけど、これはボク達だけの秘密だから、誰にも言っちゃいけませんよ」
「…言ったら、絶交…」
「…そう。ねぇ夜一サンは、ボクと絶交したいの?」
夜一は首を左右に数度振った。幼い頃から心身高めあえる唯一の友である喜助を失うことなどどうしても出来ない。だから、こうして何も言えなくなる。
 
本当は夜一も分かっているのだ。
これが何なのかも、この関係を続ければ、いずれどうなるかも……。
それでも、喜助が手に入るなら、黙ったままでいよう。
お互い騙しあいなのだ。
「じゃあ続けましょ…」
そうして、また喜助は腰を打ち始めた。もう夜一は声を隠さなかった。
<終>
 
なんだか、書いてるときはうわ、エロすぎ?!と思ったけど、読み返すとそうでもないような気がするただのエロい話です。
温泉話のリクを意識したのですが、難しいですね!