ボクの彼女は強いヒト

 

ボクの彼女は豪快で快活。高い統率能力を持ったスゴイ人。
ちっちゃい頃から、帝王学やらなにやら教え込まれていたから、いっつもお勉強ばかり。
ボクもまぁ、一緒に聞いたりしたけど、全部なんてとてもやってられない。
それなのに彼女はひねくれる事も無く、真っ直ぐにホント見事な総司令官に成長した。
知識も判断力も胆力も、同期の群を抜く。いや同期だけじゃなく、そこいらの席官なんて目じゃあない。
本当ぉーに、ご立派っス!
 
で、立派なのはその能力だけじゃなくって、その魅惑的な姿も。
いつの頃からか、ボクの目はよこしまな視線で彼女を見てた。
共に討伐に出て、前線で戦う彼女の背中は滑らかでとてもキレイ。動きに合わせて揺れる胸は、戦闘中だというのに違う高揚感をもたらす。
不謹慎ですけど、ほとんど彼女が倒してしまうンだからこうでもしないと暇を持て余しちゃいますよ。
他の部下のフォローもしつつ、圧倒的に強いだなんて本当スゴイ人っスねぇ。
そんな戦闘後の汗の滴りを見て、閨でもあんな汗を流すのかなぁ。なぁんて妄想して。
 
「何を惚けておるのじゃ!おぬしの運動のために連れてきたのに、儂だけ動いていては意味がなかろう!」
「いーじゃないっスか。他の部下に経験つませてやらないと、イザって時困りますよぉ」
「おぬしも儂の部下じゃろうが。非常時に困るのはおぬしじゃぞ」
ボクの目を真っ直ぐ見る彼女の視線は素敵。
怒っているのか、呆れているのか可愛い唇からは大きな溜息。
「違う運動なら、喜んで致しますケド?」
「違う運動?この後儂と鍛錬しようという意味か?」
「そう。ふかふかのお布団の中で一緒に一戦交えません?」
 
その意味を察した途端、みるみる顔が紅潮して眉根を吊り上げ“大馬鹿者!”と怒鳴られて、殴られて。
皆に聞かれるとマズイもんだから、ボクの襟首引っ掴んで誰も聞こえない木陰に連行される。まぁ、他の方々は疲れちゃってて今も息整えるのに必死のご様子ですけどね。
 
「おぬしは何を考えておるのじゃ!」
ヒソヒソと話しているけど、顔が紅いままで本当に可愛いなぁ。
「だって、ボク達付き合って結構経つじゃないスか。そろそろどうかなぁーって思って」
「今この場で言う事ではないじゃろ!もー、雰囲気も何も無い!」
ボクの体を木の幹に押し付て、下から睨み上げる彼女は結構本気で怒ってる。
あーあー、真面目っスねぇ。
 
「雰囲気なかったのはスイマセン。でも大好きなんですもん、したいなぁって思うのは普通でしょ?」
「場をわきまえろと言うておるのじゃ!」
「じゃあ、わきまえたらさせてくれる?」
彼女は口を開けたり閉じたりで、結局二の句を次げずに口篭った。
 
襟首を掴んでいた手を優しく解いて、握り返す。びくっと体を震わせるなんて、可愛いところあるじゃない。
「き、今日はダメじゃ!これからまだ仕事が残っておる!」
「じゃあ明日」
「あ、あっ、明日もダメじゃ!!そう、しばらくダメじゃ!仕事が…」
「嘘吐き。逃げてるだけじゃないスか。もう今日の仕事はお終い。これから戻って、即実行!」
「いや!無理じゃ!心の準備が出来ておらん!」
「そんなの、知らないっスよ」
折角人目につかないんだ、口接けたい。握った手を引いて驚いたその唇を塞ぐ。
振り解こうとする抵抗を、両腕に抱き締めて封じる。
何度も交わした唇に、舌を這わせて忍び込む。彼女の舌をそっと舐めるとくぐもった甘い吐息が零れる。
そろそろやばいなぁ。ここで押し倒したくなる。
彼女の言う通り、場をわきまえなくっちゃ。
 
「じゃあ今夜、隊舎に戻ったらボクがアナタの部屋に行きます。護衛を交替してもらうっってことで。それなら一晩中一緒に居られるでしょ?」
「儂の護衛が今夜に限っておぬしだなんて、関係をばらしてるようなもんじゃ。だから…、だめ…」
口接けの余韻で覇気が削れた彼女は、さっきまでの毅然とした隊長ではない。
「じゃあ、どうする?」
狡い聞き方だなんて百も承知。その困った顔が見たいんだ。
しばらく逡巡して何度もボクの顔を伺いながら、それでもボクの手を振り解こうとはしない。空いた手で素肌の背中を優しく撫でると、恥ずかしげに顔を逸らした。
「わ…儂が行く」
「絶対っスよ」
かすかに頷いて、腕の中から逃げるように離れていった。
 
 
 
隊舎に戻って数時間後。
夜の帳はすっかり落ちて、青白い三日月が辺りを照らす。
皆が深い眠りに入る時間に、音も無く障子が開く。
「待ってましたよ」
そっと入ってきた彼女は薄い夜着姿で、自然と欲求が膨れ上がる。
「喜助…、あの、そのなんだ。すまんが今夜はやはり無理じゃ。侘びだけ伝えに来た。では、…またの」
慌てて逃げようとして、障子に伸ばしかけたその手を掴んだ。
その途端、彼女は金縛りにでもあったかのように体を固くする。
触れたその手はじっとりと汗ばんでいて冷たい。
緊張しているのはとってもよく分かる。けどそれはお互い様ってやつでしょ?
 
「そんなこと言うためだけに、ここに来たの?」
「すまないと思っている。じゃが見逃してくれ」
「駄目。夜更けの男の部屋にそんな薄着で来ておいて、タダで済むなんて考えが甘い」
彼女の手をしっかり握ったまま、今は小さく見えるその背中を包み込むように抱き締める。
彼女の体がフルリと、一度震えた。
「お願いじゃ、喜助…。今宵は堪忍してくれ…」
「そんな無体、ヒド過ぎ。怖気づくなんてアナタらしくないっスよ」
より一層強く抱き締めると、吸い込んだ空気が彼女の匂いで一杯になる。
掴んでいた腕からそっと手を動かすだけで、ふくよかな胸の柔さに触れられる。
 
ボクは淡白な方だと思っていたけど、それは『彼女』じゃなかっただけだ。
彼女のことなら、こんなにも貪欲になる。
ああ、今すぐにでもこの薄布を剥ぎ取って、体を合わせたい!
 
何も答えない彼女を待ってられない。
後ろから抱き締めたままで、耳下から露になっている首筋に吸い付く。
堪えられない指は、その体を守るように巻かれた帯を解くために、一心不乱に蠢く。
「き、喜助!ダメじゃ…、見逃してくれ!もう心臓が口から出てきそうで堪らぬ!」
「そんなのボクもですよ!アナタだけが緊張してるなんて思い違いもいいとこだ」
ボクより小さな彼女を布団に連れ込むなんて、造作も無いことだった。ましてやほとんど抱えている状態なら尚のこと。
 
彼女を布団に押し付けるように、上から圧し掛かって、ようやく解けた帯を抜く。
そのままの勢いで夜着を脱がそうとしたけど、彼女が襟を引っ張って阻止しようと悪足掻く。
それなら、と裾をめくり上げた。褐色の大腿と臀部がなめらかで、しつこく撫で回す。
…ああ、もう!指に引っかかる下着が疎ましい!
「やっ、待て!待て!」
下着の脇から指を忍び込ませると、彼女はビク!と大きく震えた。
指先が捉えた少しのぬめりは、この行為が決して嫌じゃないことを教えてくれる。
そのまま少し上にある小さな蕾を指で擦ると、頑なだった彼女の体から力が抜けた。
好機の瞬間に、彼女の夜着を剥いでその媚態を仰向けにした。
 
月明かりの中に浮かぶその乱れた姿を見ると、完全に頭に血が上った。
興奮する。目眩の様にクラクラする。
彼女が何か言う前に唇を塞ぎ、大きな乳房を揉みしだく。柔くて温かくて、離せない。
ボクを誘惑してやまないのは彼女だ。
ボクは強要してないし、何も悪いことなんてしてない。
 
褐色のスラリとした足を開かせその間に体を捻じ込ませると、密着した体はもう夢心地の柔らかさで、夢中になって裸の肌に手を這わせる。
自分の夜着を脱ぎ捨てるのも忘れて、彼女に音を立てて吸い付く。
彼女の指も体も、力が入ったり抜けたりで忙しない。
 
ねぇ、指を噛んで声を殺すのは恥ずかしいから?それとも感じてる事、気付かれたくないから?
 
ああ、もうボクの分身は痛いほど張りつめてて、今にも爆発しそう。
下着を破くかのような乱暴さで脱がすと、彼女が口接けから顔を背けて抗ってきた。
「喜助!本当に…、それは…ん、んっ!」
抗議の言葉なんて聞いてられない。
何度も執拗に唇を追いかけては、それを吸う。
もがく足を押さえつけて、分身を濡れた女陰に宛がうと確かに受け入れてくれる入り口めがけて腰を進めた。
「ん!っくぅ…う!」
奥歯を噛み締めてそれに耐える姿は壮絶なまでに淫靡で、キレイ。
アナタはボクのものです。誰にも渡さない。
 
ボクを締め付ける温かいうねりが僅かな理性すら奪って、ボクを同じ動きを繰り返すだけの獣に変える。
「あぁ!喜助!」
その甘えた声も、背にたてられた爪の痛みも快楽に変わって、ボクを狂わす。
堪えきれない大波が全身を駆け巡って、彼女の広がる宇宙に星を飛ばした。
 
 
 
「怒ってる?」
同じ布団に包まる幸せに、にやける頬が自制できない。彼女は横目でじろりとボクを見てから大儀そうに背を向けた。
「もちろんじゃ。儂の言うことも聞かず、勝手にコトを進めおって」
「いやぁ、本当にその通りです。スミマセン。でもー、それはアナタが可愛すぎてそうなっちゃったんだからしょうがないっスよ。ね?」
頭のてっぺんまで布団に隠れるように潜り込んだ彼女を見て、照れてるんだと分かる人はきっとボクしかいない。
ふざける様に布団ごと抱き締めると彼女は嫌がって見せたが、その声は笑っていた。
「もーっ、夜一サン!大好きっス!」
                                                     <終>