愛を止めてよ
銀色の髪を愛おしんだ。冷たい体温、静かな寝息。
昔みたいに一つの布団に包まっているのに、あたしはちっとも眠れない。
昔は、アンタの隣が一番よく眠れたのに。
これは、きっと。
時間を惜しむということ。
死神になって、只でさえ気が遠くなるような生。魂の輪廻から逸脱してるかのように、ぽっかり空いた時の落とし穴。
ねえ、アンタがずっとここに居てくれるなら、あたしはもう何も望まない。
触れ合った温もりも、皮膚の感触も、髪の一房までこんなに身近に感じるのに。
明日の朝には、きっと隣にアンタはいない。
アンタを想うことが止められたなら。
アンタを愛する事を止められたなら。
仄暗い闇の森を歩く様な心細さは無かったのだろうか。
今出来る事は、白磁の肌を辿って、そっと身を添わせるだけ。
そしてそっと忘れるだけ。
勿忘草
喜助を想った。けれど、二人がこれ以上共にいるのはどうやら困難のようだ。
月は東に、日は西に、それぞれ道を違えた。
手を繋いだ日々は遠く過ぎ去り、裸足で駆けた両足はいつしか傷だらけになっていた。
願った未来とはぐれて、二人はこんなところまで来てしまった。
さぁ時が来た。別離の時だ。
そんな目で見るな。浅ましい願いを口にしそうになるから。
ああ、そんな声で名前を呼ぶな。そんな熱で触れるな。
浅ましい願いを、強く望んでしまうから。
糸がすり減り、弾けて切れる。
刹那の時まで、瞼の奥に焼きつけよう。
喜助の微笑み、そして命。
短編です。上はギン乱、下は喜夜です。切ない(物悲しい)ものがぐわーっときたので、いそいそ書いてみました。どっちも別離モノです。